個人再生からの確認事項
イギリスの金融システムと国際金融システムとの一体化が一段と進行することになりました。
第二の大きな出来事は八六年一○月一一七日に、いわゆる「ビッグ・バン」と呼ばれる証券市場改革が断行きれたことです。
その改革の具体的内容は、固定手数料を廃止し手数料を自由化したこと、ブローカーとジョバーの機能分離を停止したこと、国債取引制度を変更したこと、などが主なものです。
その背景には、金融国際化の進む中で地盤が沈下しつつある英系金融機関へのテコ入れ(競争力強化)の意味もあるとされ、金融業再編の引き金として作用してイギリスでは、伝統的に、手形交換所加盟銀行の預金・貸出金利は銀行間の協定によって公定歩合と連動するよう決められていました。
しかし、前述のように、六○年代以降発展した並行市場は、自由金利を背景として急成長を遂げてきたため、銀行間協定金利と並行市場金利との派離が問題となるにいたりました。
このため、世論も次第に手形交換所加盟銀行の金利協定に批判を強め、六七年六月に物価・所得います。
イギリスにおける金利自由化委員会が金利自由化を求める提言を行ったのを始めとして、独占禁止委員会、IMF調査団等から同様の批判・提言が相次ぎ、七一年五月、ついに E 銀行も新しい金融調節方針の一環として、七一年一○月以降、預金・貸出金利協定の廃止を打ち出しました。
この結果、手形交換所加盟銀行は預金・貸出金利の基準として、いわゆるベース・レートを各行独自の判断で設定することとなり、金利自由化が実現することとなりました。
なお、イギリスでは、七三年から七五年にかけて、金利自由化による競争激化などを背景に、ロンドン.アンド・セキユリティーズ社の流動性不足による支払い不能に端を発する深刻な信用秩序の動揺が発生しました。
これは、セカンダリー・バンキング・クライシスと呼ばれ、当初は大銀行の協調救済融資を中心とする事態鎮静策(いわゆる救命艇活動)がとられましたが、事態が深刻化するにつれ、民間銀行は追加融資を拒否、 E 銀行が「最後の貸手」として単独融資に踏み切り、大きな損失を被りつつも事態の収拾に成功しています。
以上、主要国の金融システムの現況と金利自由化の経緯をごく簡単に眺めてみました。
これをもとに、主要国の金利自由化の現状をまとめると表3のようになります。
こうした、主要先進国の経験からは多くの重要な示唆が得られます。
まず重要な点は、米国、英国、西独といった欧米主要国では、決済性預金に関する制限は一部に残存しているものの、総じてみると、小口預金まで含めた金利自由化がほぼ完了していることです。
利用者の立場から金融システムの変化を評価する場合、それがサービス向上につながるか、というのが最大の関心事項でしょう。
預金金利の自由化は、金融機関間の競争を促進することにより、預金金利の上昇ないし金融サービスの向上につながる可能性が大きいため、まず、預金金利自由化が必要となります。
しかし、サービス向上の観点からはそれだけでは十分ではありません。
預金金利のみならず、銀行業務の多くの側面での競争を促進し、さまざまな特色・比較優位を持った多くの金融機関が育ち得るよう、金融商品・サービス一般について自由化を進めていくことが重要と言われます。
これに対して、銀行と証券の分離規制を維持すべきだ、と言う人々は銀行が証券を併営することによるリスクの増大や利益相反の問題を強調します。
利益相反の問題とは、起債と貸付を同じ金融機関が行うことになれば、銀行が、倒産が懸念されるような経営不振の貸出先に債券を発行させ、これによって集めた資金を銀行貸付の返済に充てさせ、債券購入者にリスクを転嫁することにより、銀行経営の安定化を図ることが可能になる、といった問題です。
この場合、銀行は、銀行経営の安定化を図ることにより、債券購入者と預金者の対立(相反)する利益のうち、後者を優先したことになります。
しかし、ドイツでは、ユニバーサル・バンキング・システムのもとでも金融秩序を維持し得ています(ただし、その反面、金融仲介経路が貸出に偏り、資本市場の発達が遅れるという問題が生じた、という指摘もあります)。
そうしてみると、あり得べきメリットを、利益相反問題の深刻さ等のコストとの相対関係で見直し、これらのトレードオフを解決に近づけるような制度的な工夫が必要である、ということになります。
しかし金融国際化ないしグローバル化が進むと、こうした異なる金融制度間の競争ないし調整が各国通貨当局の大きな政策課題となってきます。
金融国際化によって各国金融機関・企業にとって海外金融市場の利用が容易になると、金融機関・企業は、より自由で便利な市場に取引をシフトさせることが考えられます。
それは、各国通貨当局が自国金融市場の相対的利便性を高めようとする「制度の競争」をもたらす一方、自国市場ないし金融機関の不利是正を他国に働きかけるレベル・プレイング・フィールドの考え方などを導くものとなっています。
また、国際間取引の安全性確保に関する各国通貨当局間の責任分担・協力上の調整が不可欠になることを意味します。
こうした中で特に目立つ動きを展開してきたのが、一九七四年の西ドイツにおける T 銀行の破綻等をきっかけに、各国銀行監督者間の連携強化と情報交換を目的に設立されたBISの銀行規制監督員会(その後、 B 銀監督委員会と改称)です。
B 銀監督委員会の最初の主要な成果としては、七五年一二月に海外拠点に対する各国中央銀行当局間の監督責任配分についてのガイドラインであるバーゼル・コンコーダットを取り決めたことが挙げられます。
具体的には、銀行の流動性については、所在地国当局が監督責任を負い、支払能力については、支店形態をとるものに対しては所在地国当局、子会社および合併会社の形態をとるものに対しては所在地国当局が第一義的責任、母国当局が副次的責任を負うことを規定したものです。
バーゼル・コンコーダットはその後、八二年七月に表面化したイタリアの A 銀行 R 子会社(非銀行子会社)の破綻等を踏まえて八三年六月に改訂され、その際、連結に基づく監督を原則とすることが確認されました。
また、銀行関連の非銀行会社に対しても銀行監督当局の監督が必要であるとしたうえで、流動性については母国当局が副次的責任を負うほか、支払能力については子会社に対し、所在地国・母国当局が共同責任を負うという形で母国当局の責任が強化されました。
各国通貨当局に採用された最初のものとして、八八年七月一五日に公表された、国際業務を営む銀行に対する自己資本比率規制の統一基準に関するバーゼル合意があります。
自己資本は、株式の発行で得た資本金や年々の利益の中から積み立てた内部留保であり、損失が発生した場合に利用し得る償却財源となります。
したがって、自己資本は、不測の事態に対する銀行のショック・アブソーバーと考えることができます。
自己資本比率規制は、銀行が総資産に対してある程度の比率の自己資本を持つよう義務づけることにより、銀行の健全性と競争条件の平等を確保することを目指す規制です。
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